ライラの冒険その後

ハリー・ポッター」と双璧をなすイギリスのファンタジー小説ライラの冒険」(原題His dark materials)がようやく映画化された。3部作の第1作「黄金の羅針盤」は日本での公開は来年3月だが、宣伝はもう始まっている。邦訳タイトルが陳腐なのが残念。原題の「His」をどう訳すのか分からないけれど、映画版ではもう少し気の利いた翻案はできなかったのだろうか。

ドラえもんドリトル先生ダークタワーを足したようなお話。そう言うと子供向けと思われるが、英国では大人にも人気のある作品である。BBCが2003年に実施した愛読書の調査「The Big Read」で3位を獲得している。ちなみに10傑は以下の通り。

1. The Lord of the Rings, JRR Tolkien
2. Pride and Prejudice, Jane Austen
3. His Dark Materials, Philip Pullman
4. The Hitchhiker's Guide to the Galaxy, Douglas Adams
5. Harry Potter and the Goblet of Fire, JK Rowling
6. To Kill a Mockingbird, Harper Lee
7. Winnie the Pooh, AA Milne
8. Nineteen Eighty-Four, George Orwell
9. The Lion, the Witch and the Wardrobe, CS Lewis
10. Jane Eyre, Charlotte Brontë【The Big Read】

ライラの冒険」3部作は文庫版の6冊で完成したが、後日談を扱った番外編が英語版で出版されている。「Lyra's Oxford」というタイトルで50ページ程度の小品。2年前に6冊を読了した後、アマゾンで購入してみたが、積ん読状態であった。昨日、本棚から取り出し、通勤時に読むことにした。熊沢天皇を扱った「吾輩は天皇なり」(学研新書)は途中で止めた。

著者のフィリップ・プルマン氏はこのほか、「Once Upon A Time In The North」と「The Book Of Dust」という関連する本を執筆中という。*1指輪物語」のように超大作化していきそうな雰囲気である。
(以下追記:「Lyra's Oxford」の内容含む)
■12月11日
「Lyra's Oxford」を読了。
助けを求めてオックスフォードのライラのもとにやってきたのは魔女のダイモン。ライラは魔女の病気を治せるという「錬金術師」のセバスチャン・ピースメーカーを訪ねに行く。ところがそれは罠で、魔女の本当の狙いはライラを殺害しピースメーカーの仕業に見せ掛けることだった・・・。非常に短いお話だが、

  • ピースメーカーさんが本当に研究しているものは何なのか。
  • ライラを救った白鳥の正体は何なのか。

そんな謎が残り、やや消化不良。次作「the book of dust」に続くのかもしれない。

この本の序文でプルマンはこんな風に書いている。

Perhaps some particles move backward in time; perhaps the future affects the past in some way we don't understand; or perhaps the universe is simply more aware than we are. There are many things we haven't yet learned how to read.

そして、この本のお話は「partly about that very process」なのだという。

「おそらく未来は我々の知らないやり方で過去に影響を与える」。プルマン先生、いよいよドラえもんのような「タイムトラベル」の領域に突き進むのだろうか。

Lyra's Oxford: His Dark Materials

Lyra's Oxford: His Dark Materials

*1:こちらのサイトを参照「北極光の彼方